手根管症候群とは
手根管症候群は、手首の「手根管」と呼ばれるトンネル内で正中神経が圧迫されることで起こる疾患です。手首の使いすぎや加齢など手根管内の腱の腱鞘が腫れて起こります。放置すると手のひらの筋肉がやせて、物をつかむ力や機能が低下することがあります。
産前産後の周産期、骨折、重労働、糖尿病や関節リウマチや透析の治療を受けている方、更年期障害などの方に起こりやすいとされています。
症状
- 親指・人差し指・中指のしびれや痛み
- 夜間に痛みが強くなり、睡眠が妨げられる
- 物をつかむ力が弱くなる
- 指先の感覚が鈍くなる
診断
以下の検査で総合的に判断して治療選択を行います。
ティネル徴候(Tinel sign)
手首の手根管部を軽く叩いた時にしびれが誘発されるか
手関節屈曲テスト(Phalen test)
手首を90度に曲げた状態で1分間保ち、しびれが誘発されるか
レントゲン
知覚テスト
ナイロン製の糸を用いて指先の感覚を評価するテストを行います。
電気生理学的検査
正中神経に電気刺激を与え、神経の伝わり具合を調べます。
保存療法
軽度から中等度の症状に有効で、一時的・永続的な効果の両方がありえます。
- 手首の安静・固定(装具療法)
- 痛み止めの内服
- ステロイド注射
- リハビリテーション
内視鏡手術(ワンポータル法)
中等度から重度の症状、または保存療法で改善しない場合、内視鏡手術がおすすめです。
手術時間は約10〜20分と短く、当院でも日帰り手術が可能です。
ワンポータル法とは
内視鏡を使用して手根管症候群を治療する手術法で、手のひらに約1cmの小さな切開を1か所だけ行い、そこから内視鏡を挿入して手術します。
| 比較項目 |
従来の開放手術 |
内視鏡手術 |
| 傷の大きさ |
3〜5cm |
1cm程度 |
| 術後の痛み |
ある |
軽度 |
メリット
- 最小限の切開
- 直接視認による安全性
- 部分麻酔で実施可能
- 早期回復
デメリット
- 神経などの組織を直接視認しない
- 神経変性が強いと、症状改善が困難
手術の流れ
STEP
麻酔
脇の部分から腋窩神経麻酔を行います。全身麻酔の必要がありません。
STEP
小切開
手のひら側に約1cmの小さな切開を1か所だけ行います。
STEP
内視鏡挿入
切開部から内視鏡を挿入し、手根管の内部をモニターで観察します。
STEP
横手根靭帯切離
確認した横手根靭帯を切離します。
STEP
確認・終了
正中神経の除圧を確認し、切開部を縫合して、手術を終了します。
術後のリハビリテーション
- 術後1〜2日:指を軽く動かす運動を始めます。
- 術後1〜2週:手首の曲げ伸ばし運動を追加します。
- 術後3〜4週:日常生活での使用を徐々に増やします。
当院ではスプリント作成も行っております。
術後の注意点
- 術当日は自動車の運転はなるべく避けてください。
- 術後48時間は手を心臓より高く保ち、腫れを防ぎましょう。
- 傷口は清潔に保ち、医師の指示に従って消毒してください。
- 術後1週間は重い物を持つなど、手に負担をかける動作は避けましょう。
よくある質問
- 手術は痛くないですか?
- 手術は腋窩神経麻酔で行うため、手術中の痛みはありません。術後も従来の開放手術と比べて痛みが少なく、鎮痛剤の使用が最小限で済みます。
- 手術後の傷跡は目立ちますか?
- 内視鏡手術では約1cmの小さな切開で済むため、傷跡はほとんど目立ちません。従来の開放手術(3〜5cm)と比べて、美容的にも優れています。
- 手術後はいつから仕事に復帰できますか?
- デスクワークなど軽作業であれば術後3〜5日程度で復帰可能です。力仕事や手に負担のかかる作業は3〜4週間程度の休養をおすすめします。
- 手術の成功率はどのくらいですか?
- 内視鏡手術の成功率は95%以上と非常に高く、多くの患者さんが症状の改善を実感しています。早期に治療を受けるほど、回復の見込みは高くなります。